ケアマネージャーの方へ

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少子高齢社会と感染予防 =在宅療養者(MRSA)の口腔ケア=

情報掲載日 2011/09/16
資料室


退院されて在宅療養されるようになった高齢者のいらっしゃるご家庭では、入院中に痰からMRSAが検出され、『感染はしていないものの、退院時点ではまだ咽頭に菌が定着している…』等と医師に言われた患者さんがいらっしゃると思います。そうした方には口腔ケアに種々の注意が必要になってきます。その周辺の事をここでお話いたします。これはご家族にとってとても重要な情報です。

 MRSA陽性患者(保菌者)は、状態がよければ速やかに退院して家庭において療養する事が望ましく、基本的には家庭における通常の清潔管理で十分ですが、MRSAの拡散予防のためには本人及び家族においても、手洗い、うがい等の励行が必要になってきます。

             要介護者とMRSA

 MRSA(メチルサン耐性黄色ブドウ球菌)感染症は、わが国では1980(昭和55年)年代後半から急増し、院内感染の問題がマスコミを通じてセンセーショナルに報じられ、それ以来国民の関心事となったものです。

退院して在宅療養となった時点で保菌状態は明確ではありませんが、感染に感する患者や家族あるいは在宅療養に関連する人への退院時の情報提供は必ずしも一定ではなく、入院歴のない診療所にかかっている一般の方にも検出される事がある事から、常在菌の様にとらえられがちですがそれは違います。

              何が問題になるのか
MRSAはもはや病院内の問題でなく、広く家庭や施設内にも持ち込まれていて、要介護者は常に感染の危険と隣り合わせになっています。また、環境への伝播の弊害は、要介護者自身に感染源が戻ってくる深部感染の危険性とともに、施設内感染を含め家族や介護者に与える影響も無視でき無い事は確かです。

 咽頭部にMRSAが定着している場合、当然鼻腔や口腔も同様と考えられますが、要介護者自身にとっては気道感染、特に不顕性誤嚥によるMRSA肺炎には至らないと考えられていますそれも違います。

口腔ケアをこまめに実施すると、MRSAはもちろんの事、口腔内の細菌数を極力少なくすることが出来、肺炎の予防につながります。一方、介護者にとっては痰の飛沫やちり紙、手指による環境の汚染が問題となります。日常の口腔ケアと環境整備で、感染の機会が減少する事を『歯科の観点』から強調したいと思います。
口腔ケア実施上の留意点

除菌の試み
MRSA鼻腔保菌者に対しては、ハピロシン軟膏の効果が注目されている。咽頭にはポピドンヨード液が効果をもたらせます。除菌の試みや感染予防対策については、要介護者の状態や居住空間によって異なりますので、かかりつけ医と相談のうえ、適切な対応が望まれます。その情報は介護に携わる全ての人々に伝えられ、統一した方法がとられなければなりません。

口腔ケアの前には手洗いが重要です
感染予防の基本は“手洗いに始まり手洗いに終わる”といわれています。MRSA対策として特別な手洗いの方法があるのではなく、日常的な手洗いで十分です。施設など数人の人を続けてケアする場合など、その都度手洗いが困難な場合には消毒薬を用いた方法もありますが、その際も基本は流水による手洗いであることを忘れてはなりません。さらに、ケアの実施中に痰が飛び散る事が予想される場合など、状況に応じてマスク手袋の装着も検討したいものです。

1 一般的な手洗い(日常的手洗い)方法
石鹸を用い、流水で20秒以上の手洗いするのが基本で、洗面器による手洗いや手洗い後に同じタオルで頻回に手を拭くことは避けましょう。
2 消毒薬を用いた方法
各種アルコール系の手指消毒薬、アルコール(70%イソプロパノール)綿による手指清拭、あるいは0.2%塩化ベルザルコニウム含有の消毒用エタノールなどの速乾式手指消毒薬を手にすり込む方法をお奨めします。

口腔ケアの実際
MRSA保菌者だからといって特別な口腔ケアの方法がある訳ではなく、要は口腔ケアをこまめに実施し、口腔内を清潔に保つ事が大切です。口腔、咽頭のMRSAの除菌にはポピドンヨード液が有効であり、通常の口腔ケアに加え、1日に3回ないしは4回位うがいを実施すると良いでしょう。特に、就寝前が効果的です。うがいが出来なければ綿棒につけて口腔内を清拭しても良いでしょう。具体的なケアの方法、回数については要介護者の自立度などによって様々ですが、他のサイトを参照して見て下さい。最近では歯ブラシを十分使えない人のために、ディスポーザブルの介護用口腔ケア用品(手袋タイプやスポンジタイプなど)もありますので、いずれを用いるにしても、要介護者個人専用とする事はいうまでも有りません。