ケアマネージャーの方へ

ケアマネージャーの方へ

在宅療養をはじめる方のご家族の方々へ

情報掲載日 2011/09/16
資料室


はじめに
『在宅療養をはじめる方のご家族へ』と題して、在宅療養者ご本人とご家族に対して、スムーズに在宅療養に移行できる様にご案内をさせて頂きたいと思います。《在宅医療助成勇美記念財団。の助成により作成したパンフレットの記事をご好意によって引用させて頂きました》
在宅で療養するに当たって、今後どのようにして医療サービスを受ける様になるのか?また、療養上の問題は何処に相談したら好いのか等心配や不安をお持ちの方は、是非とも一人で悩まず、担当のケアマネージャーや医療スタッフに躊躇う事なく相談する事をお勧めしておきたいと思います。
参考までに、これからの在宅療養をイメージして頂く為に、次の記事を読んで頂いて、『在宅療養と病院療養との違い』をシッカリ認識しておいて頂きたいと思います。

今までは、病院と言う医療の場で医療者がすぐ傍らにいました。しかし、これからの在宅の療養の場では医療者が傍らにいないと言う事が最も大きな違いです。それは、これからの在宅療養では医療的ケアの一部とお身体の世話をする介護的ケアを、ご家族の誰かがする事になると言う事です。その為に少しでも退院前にご自宅の療養環境を整えておき、介護に必要なものを揃えておく等、これからの在宅療養への心構えを持っておく事が何よりも大切な事だと言えます。また、ご家族ができる医療的ケアや介護の方法については、これから医療系のスタッフによって逐次サポートされる事と思いますのでご心配はいりません。

住み慣れたご自宅で、その人らしく、より好い時間が過ごせるように、心に余裕を持って、気張らずにケアマネを軸として、共に協力していく事が何よりも大事な事だとお考え下さい。
※ 在宅療養に関する相談窓口は病院にもありますが、主治医や看護師にお尋ねいただき、各々の病院における相談窓口でご確認頂くとより安心出来る在宅療養が出来ると思います。
 
※歯科医療系サービスに関しては必要があると思われた場合には、なるべくご本人・ご家族の方が主治医に相談の上で、担当ケアマネージャーから当院のケアマネまでお問い合わせください。
【摂食・嚥下障害アセスメント】の重要性
 嚥下障害は、脳卒中や神経難病等を基礎疾患として起こる、在宅医療でよく見られる口腔機能の障害です。そうした摂食・嚥下障害をもった方自身が、『私には摂食・嚥下障害があります・・・等』と訴える事は先ずありませんので、摂食・嚥下障害の診断と評価は医師や看護師と歯科医師が疑うところから始まるのが普通です。
しかし、現実的には【摂食・嚥下障害のアセスメント】はおろか【歯と口腔アセスメント】がとられる事が少ない事と、そうした依頼や問い合わせが歯科医師の処に求めて来られていないのが現実です。
神経疾患をベースとして、『痩せてきている…食事時間が長くかかるようになった…時々発熱する…食事中、食後に咳やむせ、ゼロゼロ、ガラガラ声(声枯れ)がある…食べると疲れる…』等の症状あった場合は、摂食・嚥下障害を疑ってベッドサイドアセスメントを実施するのが好ましい事です。

1.【ベッドサイドアセスメント】を行ってみましょう!
【カラ嚥下が一秒以内】であるか、【唾液反復嚥下試験(RSST)が30秒間に2回以上嚥下】が可能かをみる事は、ベッドサイドで安全で、簡単に実施できる方法ですので、意思疎通が可能な療養者に対しては、嚥下障害の発見に感度も高いので、家族を始めとして医療・福祉・保健・関係者は試して見るのがよいと思います。
 同様に【30cc水のみテスト】は、常温の水30cを座ったままの手に渡し、『この水をいつものように飲んで下さい』と説明して、水を飲み終わるまでの時間やプロフィール、エピソードを測定観察する方法です。
 これがベッドサイドアセスメントとして頻用されている理由ですが、カラ嚥下やRSSTでは意思疎通が可能な方に限られている事や、水のみテストではコップが保持できない方には実施できない方法なのがデメリットと言えます。
30cc水のみテストの評価法
《プロフィール》
1. 1回でむせる事なく飲むことができる
2. 2回以上に分けるが、むせる事なく飲むことができる。
3. 1回で飲む事が出来るが、むせる事がある。
4. 2回以上に分けて飲むにもかかわらず、むせる事がある。
5. むせる事がしばしばで、全量のむ事が困難である。

《判定》
 正常範囲 :プロフィール1で5秒以内
 疑  い :プロフィール2
 異  常 :プロフィール3,4,5
 Teramotoらが報告した簡易嚥下誘発試験 (Simple Swallowing Provocation Test ; S-SPT)では、シリンジとカテーテルのみで、ベットサイドで簡便に施行できるので、受ける方の負担が少なく、繰り返し施行する事が可能な方法です。
 この方法は意思疎通不可の方やねたきりや四肢麻痺の方にも実施できる方法です。さらにS-SPTは一般的な水のみテストと比べて、感度、特異度とも高く、信頼性が高いのが特徴です。
 この方法は口腔内清拭後、臥位にて施行する事が出来ます。通常使用するエキステンションチューブ(内径4mm)と5ccシリンジを使用し、口腔から(原法は鼻腔から)中咽頭に挿入し、口唇で軽くくわえさせ、0.4cc、1cc、2ccの順に水を注入して、嚥下運動の誘発までの時間を測定します。 正常の場合は0.4ccの少量の注入で嚥下反射が誘発されます。

判定基準は
2ccで嚥下反射(-)であったり、潜時が3秒より長い場合
⇒経口摂取不可と判定。
1ccで嚥下反射が潜時3秒以下で(+)の場合
⇒経口摂取可能と判断>直接嚥下訓練を開始します。
1ccで嚥下反射が潜時3秒以下で(+)の場合
⇒食物テストによる評価を行います。
冷水3ccで嚥下時にむせがなく、誤嚥、肺炎の徴候がない場合
⇒プリンを用いた食物テストを行います。
プリンを用いた食物テストでむせがなく、食物残渣がない場合
⇒直接嚥下訓練を開始します。
 両者の中間にあたる、「2ccで嚥下反射が潜時3秒以内で(+)であるが、1CCで嚥下反射を認めないあるいは潜時3秒より長い」場合は、やはり嚥下造影やファイバースコープによる精査が望ましいと思います。嚥下障害の評価において、嚥下造影にまさる方法はなく、ボーダーラインにある方で、何とか来院可能な方は嚥下造影を行うほうがよいでしょう。しかし、どうしても精査が必要だが、来院不可の方には、携帯用ファイバースコープを用いた内視鏡検査という方法もあります。