ケアマネージャーの方へ

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望まれる【在宅療養支援歯科診療所】の存在!?

情報掲載日 2011/09/16
資料室


これからの歯科医療の提供は、在宅で療養している方や、近い将来に在宅療養が予想される方々(脳血管障害者、抗がん剤使用者、認知症、パーキンソン、他系統萎縮症など)に対して、【訪問口腔健診】【訪問口腔ケア】【訪問歯科診療】等の【在宅歯科医療】が必要とされ、地域の他の医療・保健・福祉関係者と連携して行なう【社会サービス業】であるとの認識を持ち、在宅で適切な生活が送れる様に支援する事が求められています。しかし、多くの歯科医院では、まだ、 自院のかかりつけ患者さんに対してすらスタッフ構成や保険請求事務の煩雑さや制度理解において、負担が多い事から敬遠されがちです。また、ケアマージャーの方々も何処が【在宅歯科医】であるかが分からないでいる状態だったと思います。
※超高化時代となった現在、歯科訪問診療のニーズは高まって来ています。
高齢者が安心して食事を楽しみ享受できる事は、ごく当たり前の生活の営みだと思います。そしてまた、地域の多職種から在宅療養者の【食の支援】をもっと多くの歯科医師が関わる事が望まれていると思っています。
他の職種の方も、是非【在宅歯科医療】という分野に注目して頂き、諦めずに、【歯科訪問診療のニーズ】を地域の【在宅療養支援歯科診療所】にお寄せ頂きたいと思います。

私の訪問歯科診療の体験を踏まえた話をさせて頂きますと、依頼の多くが患家やその周辺から直接依頼されるモノが殆どで、ケアマネジャーさんや地域包括支援センターから依頼される事は先ずありません。治療の内容から、その多くが多数歯に亘って治療を要する場合が多く、そのメインは義歯の作製・調整・修理、虫歯や歯周病の治療になっていますが最近になって、【口腔機能向上】の為の訓練を行うケースも出て来ています。そこで、「口から食べたい」という患家からのご希望に対して、歯科医師、歯科衛生士、歯科スタッフが先ず最初に行なう事は、【口腔健診】と同時に行なう【歯とお口のアセスメント】と【口腔ケア】です。
そして、食介護支援としては、口の中たけで無く、食事を何処でどのような格好で、どの様なものをどの様に摂っているか等も知る事が必要だと考え、許される限り6時過ぎの食事時間帯に訪問させて頂いて、診療をする様にしています。

自力で通院が困難な患者さんを対象とする【歯科訪問診療】は、計画的な診療計画にもとづく在宅等を訪問して行う歯科医療行為の事ですが、実際には入れ歯の不具合や清掃不良による歯や歯肉の痛みに対する救急診療が殆どでがです。
当院の場合、今後、脳梗塞や脳出血等による後遺症の患者さんに対しても、主治医のかかりつけ医と連携がとれる態勢に整備して行きたいと考えています。

歯科訪問診療には専用機材が必要になり、歯科医師・歯科衛生士が自宅等に器材を運び込む事もあります。歯を削る道具には、照明付の切削器具を装備したポータブルユニットや治療椅子を宅急便で送り込んでおく事もあります。
口腔ケアの第一段階として大切な事は、口腔健診で口腔内環境を把握する事です。摂食・嚥下障害やそうした傾向がある場合には、誤嚥や窒息といったリスクが付きまとい、誤嚥性肺炎から生命の危機に直結しうる事も高いので、【歯・お口のアセスメント】をとる事が重要に成っています。

口から物を食べるということは、口の中にある常在細菌や他の雑菌・細菌を全て取り込んでしまうと言う事です。ここで特に重要な事はそれらが【誤嚥】によって、肺に入り込む事です。それを防ぐためには徹底的な口腔ケアが必要になります。口腔内環境の整備としては、①う蝕の予防、歯牙の保存、②歯周疾患の予防、改善、③粘膜損傷、乾燥等からの改善、④誤嚥性肺炎の予防、⑤口腔及び周辺組織、筋への刺激による廃用予防といったことを柱として行います。

次に歯牙の保存、虫歯の治療です。虫歯があると状態の悪化によって咀嚼・嚥下が難しくなったり、廷出した歯牙により口が閉められない状態になってしまい、嚥下がしにくくなったり、経管栄養と胃ろうとなって(※二年間の絶食状態)、口腔内の筋肉及び周辺組織が軽い廃用状態になる事もあります。そこでは、先ず、廷出した歯の抜歯と廃用からの脱却をめざして、嚥下に必要な筋のマッサージを行う事が必要になってきます。

歯科医師も他の職種と連携することで、より力を発揮する事ができます。特に医科の先生との連携で、口腔内の疾患の早期発見・治療につながり、【口腔機能の保持・増進・向上】に寄与する事ができます。また、当院では必要に応じて昭和大学歯科病院の【口腔リハビリテーション科】の協力を得て、嚥下機能の回復を図る態勢をとっています。
※ 連携することで歯科医師単独ではできない嚥下造影撮影も可能になり、QOLの向上に寄与できると期待しています。

◎ 屋内で自立していても介助なしには通院できない者
◎ 認知症により一人で通院させたら危険な者
◎ 家族などの介助で臨時的に医科受診している場合も対象となります


歯科訪問診療が実施可能な訪問先

<在宅への訪問>
・一戸建て住宅
・一般のアパート・マンション
<居住系施設>
・養護老人ホーム
・経費老人ホーム(ケアハウス)
・有料老人ホーム(特定施設入所生活介護)
・小規模多機能ホーム(宿泊サービス利用者のみ)
・グループホーム(認知症対応型生活協同介護)
・高齢者専用賃貸住宅(高専賃)
<施設への訪問>
・介護老人福祉施設(特養ホーム)
・介護老人保健施設(老健)
・介護療養型医療施設(病院)
・歯科標榜のない病院
・歯科標榜のない有床診療所

在宅歯科医療の現状
要介護者等の在宅療養患者は、全身的な基礎疾患を有しているか、また、生活の質に影響を及ぼす歯科疾患の重症化等が生じやすく成っていて、う蝕や歯周疾患、歯の欠損に対する治療や口腔機能管理を安全かつ適切に行なう事が歯科医師に求められています。
介護高齢者の約74%でう蝕治療や有床義歯等何らかの歯科治療が必要であるにもかかわらず、実際に歯科治療を受診した者は約27%にすぎません。また、在宅歯科医療を実施している歯科医療機関の割合は、歯科医療機関全体の2割程度となっていて、更に地域における在宅歯科診療を後方支援する病院歯科の施設数も減少しているのが実情で。
このような歯科医療機関側の状況を詳しくみると、「必要な設備・機材の整備や人員確保に係る負担が大きい」、「時間的負担が大きい」、「患者のニーズが十分把握することができていない」、「診療報酬体系が複雑」、「十分な歯科治療や全身管理が適切に行えるか不安」等が挙げられています。

他方、患者やその家族からみた場合、在宅歯科医療に対するニーズは高いものの、在宅歯科医療を実施する機関等に関する情報の入手先がいわゆる口コミによるところが大きいなど、十分な情報提供がなされていない等の課題がある事は事実です。

現行の診療報酬上で評価が加えられた事!?
在宅歯科医療の推進を図るため、在宅歯科医療を歯科医療面から支援する「在宅療養支援歯科診療所」の機能の評価(在宅療養支援歯科診療所の創設)や、在宅療養を担う歯科医師や医師等による情報共有等の促進の評価の新設、病院歯科の機能評価を適切に行う観点からの地域歯科診療支援病院の施設基基準の見直し、及び在宅歯科診療を担う歯科診療所の後方支援機能としての病院の入院歯科医療の評価の新設(地域歯科診療支援病院入院加算)等が行なわれました。その中でも最も特筆すべき事が【在宅療養支援歯科診療所の創設】です。

1.在宅療養支援歯科診療所の創設
後期高齢者の在宅又は社会福祉施設等における療養を歯科医療面から支援する歯科診療所を「在宅療養支援歯科診療所」と位置付けられ、その機能評価は他の医療機関とは僅かながら高くされています。
[施設基準]
① 所定の研修を受講した常勤の歯科医師が1名以上配置されていること
② 歯科衛生士が1名以上配置されていること
③ 必要に応じて、患者又は家族、在宅医療を担う医師、介護・福祉関係者等に情報提供
できる体制を整えていること
④ 在宅歯科診療に係る後方支援の機能を有する別の保険医療機関との連携体制が確保されていること
2 退院時共同指導料の新設
① 退院時共同指導料1
1 在宅療養支援歯科診療所の場合 600点
2 1以外の場合 300点
退院後の在宅医療を担う保険医療機関と連携する歯科診療所の歯科医師又は歯科衛生士が参加して行う共同指導を評価。
② 退院時共同指導料2 300点
入院中の保険医療機関の保険医である歯科医師、看護師、歯科衛生士等が、入院中の患者に対して、患者の同意を得て、退院後の在宅での療養上必要な説明及び指導を、在宅療養を担う保険医療機関の医師、看護師等と共同して行うことを評価。